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園路 [├ガーデニング・エッセイ]

最近、テレビはリアルタイムで見ることはほとんどなく、見たい番組を録画してみるばかりである。「素敵にガーデニングライフ」は、毎週見ている数少ない番組の一つで、当然のことながら保存もしている。
録画環境は、TransCubeというHDDビデオレコーダーの先駆けの製品を使っていて、PC経由でTeraStationというLAN接続ハードディスクにコピーし、DVX-600というネットワークメディアプレイヤーで再生するという、きわめてマニアックな構成となっている。まぁこれも、2011年のアナログ停波までしか使えないから、そろそろデジタル放送への対応を考えないといけないところではある。

それはともかく、この環境の利点は、すでに100回を越える放送をテープを入れ替えるという作業なく見れるところにある。しかも、ランダム再生なんてのもできる。これが意外性があって結構面白く、見始めると延々と見続けてしまったりする。

「素敵にガーデニングライフ」では、日本の庭だけではなく、海外の庭も紹介している。放送回数に対する紹介する庭の数の割合から考えても、海外の庭は厳選されたものであるのは明らかではあるのだけれど、それでもレベルの差は歴然としていて、日本のガーデニング文化の未熟さを感じるところではある。

そんなわけで、日本の庭の紹介よりは、海外の庭の紹介のほうが楽しみだったりするのだけれど、ランダムな順番で番組を見ると、当然のことながら、日本の庭と海外の庭が混じって再生される。で、気がついたことがある。

園路について、である。


日本の庭の園路は、概して細い。そして、細い園路には、さらに植物がせり出している。園路はさらに細くなり、人ひとりがやっと通れるくらいだ。「狭いから。」たぶん、すぐに思いつく理由だろう。だけど、果たしてそうなのだろうか?プロが施工したと思われる庭の園路は十分な広さが確保されているし、狭い庭でも海外の庭の園路は、確かに細いが、植物に侵食されることなくスペースがはっきりしている。

絵画や写真で構図を決めるとき、「空間」が重要である。日の丸構図は、下手の見本と言われるくらいで、被写体をずらし、空間を空けることによりバランスのよい絵になる。たいていの芸術で、「間」は重要な要素である。であれば、ガーデンデザインにおいて重要でないということがあるだろうか?

園路は、庭の構造の重要な要素である。バックヤードに麻袋で園路を作ってから、不思議とアイデアがわいてくる。池を作り、丘を作り、今年は雑草の広場ではなく、ちゃんと庭として見れるくらいになった。それまでぼんやりしていた庭の構造が、一気にはっきりしたようだった。

植物に侵食される、というのはどうなんだろう?確かに、花壇からあふれさせることで、レンガやブロックなどの人工物の直線的なラインを覆い隠し、ラインをやわらかくするという技法はある。だけど、人ひとりがやっと通れるくらいまで植物に園路が侵食されてしまうのはやりすぎではないだろうか。

園路ではないが、ポールスミザーは四季のガーデン生活で、「狭いからこそ、川の流れになる部分は十分に広く取るように」とアドバイスしていた。「はじめての庭づくり」のコーナーでアシスタントの影島さんの「川の流れがあるような」というアイデアに対してのことだ。「植物で侵食されて、川に見えなくなってしまうから」ということだった。

おそらく、「細い園路」は、花が好きで、植物が好きで、庭のデザインより優先されてしまった結果なのだろうと思う。だけど、植物をより引き立たせるためにガーデンデザインはある。そのために「間」を大切にしたい、と思う。


植物に覆われるといえば雑草。その雑草を取っていて、気がついたこともある。園路の雑草を抜くだけで、きれいに見えるということだ。

バックヤードの植え込み部分は、まだ全部が整備されていない。未整備の部分は雑草が茂るが、ほとんどはそのままにしている。雑草も(この場合は野草というべきか)きれいなものだから、手の入っていないところが多少乱れていてもあまり気にしないようにしている。だから、雑草取りは、花壇の中で目立つやつとか、園路だけになるのだけれど、園路の雑草を抜くだけで、庭はすっきりし、きれいに見えるようになる。

そう考えると、イングリッシュガーデンの芝生の園路の機能が優れていることがわかってくる。

イングリッシュガーデンでは、芝生の美しさが際立っている。芝生の広場は美しく、その美しさに惑わされ、玉砕している日本のガーデナーは数知れないだろう。でも、よく見れば、芝生は広場だけではなく、園路にも使われている。

芝生の園路は、あまり細くはできないだろう。手入れができなくなってしまうからだ。自然と広めの園路となる。そして、芝生のエッジは、きれいに整えている。ちゃんと手入れができていることの証で、ステータスでもある。だから、芝生に植物がはみ出してきたりはしない。やはり、エッジの手入れができなくなってしまう。芝生のエッジは、曲線も作りやすく、角を隠す必要もない。

芝生は、その美しさのためというより、もっと機能的なことから選択された実用的なものに思われる。植物の特性から庭の構造に一定の制約を作り出しガーデンデザインを規定し、その緑はキャンバス(背景)となる。イギリスでも芝生の手入れは大変だろうが、ちゃんと手入れのされている芝生をステータスとすることで、機能性を捨てないようにしているのではないだろうか。


さて、我が庭のバックヤードの園路も、麻袋がだいぶ痛んで雑草を防止することができなくなってきた。そろそろ他の素材でちゃんと園路を確保する頃合だ。芝生の機能性は見たとおりだが、日本では芝生の手入れは、ちょっと大変すぎる。園路の素材としては、何か他に適当なものはないだろうか?

最初は、ウッドチップを敷こうと考えていた。エッジは直線にならず融通が利く。その分、気をつけないと侵食される恐れもあるが。でも、最大の問題は費用だろうか。園路の長さを考えると結構な出費になる。そのうえ、麻袋と同じで時間がたてば痛んでくる。そうなったらチップを追加することになるが、それにはどのくらいの追加出費が必要になるだろう?

レンガはどうだろう?最初の出費はかかるが、追加出費はないと考えていいだろう。だけど、エッジが直線的になってしまうという問題はある。曲線をつくる施工は、ちょいと面倒だ。

砂利。レンガよりは安くできそうだ。ウッドチップほどの追加はいらないだろう。エッジのラインも自由にできる。ふ~む?なんか、一番よさそうな気がする。そういえば、日本庭園の園路でも良く使われてなかったか?イングリッシュガーデンの芝生のように、その風土に合わせて機能性を考えると、残ってくるものは決まってくるのだろうか。



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チョコまる

なるほど。うちの実家の庭の園路は植物たちに侵食されて、飛び石の上しか歩けません(^-^;) 確かに庭をデザインするには適度な間が必要ですね。
ちなみに、うちの駐車場には防草シートとレンガをくだいた砂利を敷き詰めてあります。砂利といってもいろんな色があるので意外と選ぶ楽しみがありますよね。
by チョコまる (2006-07-23 11:43) 

Jackな気分

いむらさま
こんにちは!
初めてコメントいたします。
ポールさんのお名前があったので…嬉しくなりました。
以前東京におりましたもので…ポールさんの講座を受けておりました。
八ヶ岳の方へも何度か伺って…お手伝いしながら講議を受けたものです。
ポールさんの自然な色使いと植栽の方法は本当に学ぶところがありました。
お話も楽しくて…次の年も単発の講習もして頂きました。
どんどん変化し続ける庭作りを教えていただきました。
私もDVD見てみようかな~。
では、またお邪魔します。
by Jackな気分 (2006-07-23 14:55) 

Ryu

Ryuです、こんにちは!なかなか本格的にガーデニングを追求されているようで関心致します。富良野のプリンスホテルからTVドラマの為に作られた喫茶店「森の時計」までの森の小道には確かにチップがひきつめられていました。絨毯の様な感触を思い出します。我が畑のガーデンは、芝生を園路に移植していますが、貴方のおっしゃる様にレンガも良いようですね!どんどんと形成されていく貴ガーデンの進化を楽しみにしています。
by Ryu (2006-07-23 16:00) 

せり

どんな風に録画されているのか、全くイメージできませんでしたが、園路の事はなんとなくわかりましたよ^ ^;「花園」の園路は石を敷き詰めているだけです。雑草シートか麻袋かを敷いてから石を敷けば、雑草対策になるかなと思うのですが、放ったらかしです。でも本当は枕木を敷いて、石で空間を埋めてみたかったのですが、自分の庭ではないので、、、。砂利の方が作業はしやすいでしょうね。白い石を敷くと自分が歩いて汚くなってしまうので、ちょっと悲しいです。植え付けができないので、園路を改造してみようかなと思いました^ ^
by せり (2006-07-23 18:25) 

いむら@fintopo

>チョコまるさんへ
確かに、砂利もいろいろな種類があって、探すのが楽しいです。以前は、砂利というと和風のイメージがあったのですが、そればかりじゃないんですよね。

>Jackな気分さんへ
お~、それはうらやましいことです。私は、テレビだけなので、いろいろ勘違いしているところもあるかも、なのです。いつか生で聞ける機会があるといいなぁ~、と夢想しております。

>Ryuさんへ
そうなんです。チップのやわらかい感触がちょっと捨てがたいんですよね。どのくらい持つものなのか、費用との兼ね合いで、ちょっと悩んでいます。

>せりさんへ
録画環境の話は、まぁ、まくらなので。^_^;;
園路も考え出すといろいろとあって楽しいです。植え付けとは違う変化があるんじゃないでしょうか。
by いむら@fintopo (2006-07-24 20:42) 

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